d33. 436.5MHz 7エレメント摂動励振(エレメント位相式)クロス八木アンテナの製作 2019/10/23
2スタック及び2列×2段完成しました。
(エレメント位相式と書いてきましたが,正式には「摂動励振」(せつどうれいしん)(*1)と称することが分かりました)
(写真,図はクリック拡大) 製作しながら書いていますので文章,図等は随時変更します。
1. シミュレーション結果
図1はこのアンテナのMMANAシミュレーターによる寸法の表で数字は±XYZの座標(図5の±XYZ)で表されています。
図2はアンテナ1本,2スタック,2列2段スタックのゲイン等の計算結果です。
図3は2スタックで天頂に向けた90°面の偏波面で,左側は水平偏波(黒線),垂直偏波(赤線)の差が軸比(RA)と考えています。(この図ではAR0.5dB程度)
補足∶MMANAではクロスするラジエーターのY(水平エレメント),Z(垂直エレメント)寸法を変更して何度も計算し,水平偏波(黒線),
垂直偏波(赤線)が真円にして,その差を少なくなるようにして円偏波にする,と同時にRを50Ω,jXを0に近づけてSWRを1.2以下に
しています。3kでやっています!hi (経験,勘,根気) (ARが3dB以下を円偏波と称しています)
図4はSWR特性。(436.5MHz±10MHz)
図5は図3の時のアンテナ姿勢。(天頂向け)
図6は436.5MHz 6エレメント八木(一般的な八木アンテナ)を天頂に向けた90°面の偏波面で,左側は水平偏波(黒線),垂直偏波(赤線)で共に8字特性になっています。図3と対比するために参考にしてください。
⇑図1 ⇑図2 ⇑図3 ⇑図4 ⇑図5 ⇑図6
2. 製作図面等
図7はアンテナ全体寸法図。
図8はラジエーターのクロス部拡大図でF→Bはアンテナのフロントからバック方向を見た図、B→Fはアンテナのバックからフロント方向(電波の進行方向と同じ)を見た図。共に右旋円偏波となっています。
図9はラジエーターの詳細図で151.5mmと175.5mmの接続点をノコ歯で1~2mmほど切り込みを入れて90°に曲げる。(156と180は座標を示す)
図10はブーム(ASB樹脂角パイプ)及びポリカーボネイト板の詳細図。
⇑図7 ⇑図8 ⇑図9 ⇑図10
3.作製中及び完成品
作るポイント∶正確にシミュレーション通りの寸法に作る。(エレメント長、エレメント間隔等)
ラジエーターはφ3銅パイプ、その他のエレメントはφ3アルミ棒(材質A5052∶アルミ材料屋で大阪市内の店で通販してる)
ポリカーボネイト板は3mm×25mm×70mmに切断したものを購入して穴開けします。穴外形寸法指定できます。購入先∶はざいや
ポリカーボネイト板を取り付けるねじは,モノタロウ∶エバタイト(+)ナベ (SUS410)ステンレスM3×8タッピングねじ,先端は平らなタイプ。
ブーム材料はJEMA(ジェマコーポレーション) で購入します。ABS樹脂角パイプ(SL-24L)なので高価です。(1本1,430.-程度,7エレメント1本で1.5本必要)
同軸ケーブルは関西通信の5D-FB×1105mm(短縮率0.8)、
図11は図8のRa F→Bの状態です。図11のブームのポリカーボネイト板をネジ止めする部分は厚さ2mm程度のABS板を内側に接着しておく。
図12(先端(黒外皮2mm+白絶縁2mm)+芯線曲げ10mm)
図14はラジエーター部分の様子。同軸ケーブル編組と芯線はラジエーターのφ3パイプ穴に入れて半田付けします。
同軸ケーブルとラジエーターの半田付け部分はKE45T(透明)を充填します。(固着まで1週間ぐらい)、同軸ケーブルの反対側はN-Pコネクター。
エレメントはウルトラ多用途ボンド(クリヤー)で中心を出してブームに固定します。
エレメント表面はアクリルラッカースプレー(クリヤー)を吹き付けておく。特に銅パイプは変色(酸化)防止になる。(樹木の害虫消毒液噴霧で真っ
黒になる!)
寸法精度はエレメント長が±0.1mm以下、エレメント間隔が±0.2mm以下が望ましい。(200mmと600mmのノギスを使用した)
SWRは寸法通りに精度よく作ればシミュレーション通りの結果が得られます。ただし円偏波の軸比を小さくするのは測定方法を含めて難しい!
⇑図11 ⇑図12 ⇑図13 ⇑図14
4.アンテナアナライザーによる測定データー等
図15はラジエーター(Rah,Rav)とリフレクター(Ref)のみを取り付けて測定したSWR値です。同軸ケーブルとラジエーターが正しく接続されていることを確認します。SWR最低点(SWR1.1)は425MHz付近です。
図16,図17,図18は完成品の436.5MHz付近のSWR,R,Xです。図19はSWR最低の周波数と値です。
上記のシミュレーションとほぼ一致しています。(図4と図16) 組み立てたままで調整等はしていません。(調整できない)
図19-1はラジエーターのクロス部をKE45T充填したSWR特性です。周波数が3~4MHzほど低い方にずれました。
⇑図15 ⇑図16 ⇑図17 ⇑図18 ⇑図19 ⇑図19-1
5.アンテナゲイン、円偏波軸比等の測定データー等
図20は14エレメントクロスと今回作った7エレメントクロスの円偏波特性比較測定結果です。約10m離れた所から3エレメント八木に436.550MHzを給電して2~3回転して14エレメントクロスと7エレメントクロスで測定しました。(縦軸目盛り: dBμ)
結果は14エレメントクロス軸比5.0dB、7エレメントクロス軸比2.4dBでした。平均のゲイン差は5.0dBでした。
シミュレーションでは14エレメントクロス16.32dBi、7エレメントクロス12.06dBiなのでゲイン差は4.24dBとなっています。
シミュレーション以上のゲインは無いと思われるので14エレメントクロスのゲインが少なく,軸比も大きくなっていると推測しています。
原因は14エレメントクロスは金属ブーム(エレメントは樹脂で絶縁しているが)、7エレメントクロスはABS樹脂なのでその差が出ている可能性があると考えています。(大地反射の影響も考えられる?,別途調査予定)
図21~23はアンテナ設置状況。図24はラジエーターのクロス部分。図25は軸比測定模様,435.550MHz,-67dBmを3エレメント八木(直線偏波)から送信し,360°回転させて7エレメントクロス2列2段で受信しデーターレコーダーで記録しました。(送受間隔約10m)
⇑図20 ⇑図21 ⇑図22 ⇑図23 ⇑図24 ⇑図25
6. 組立写真集(主に2本目の写真,SWRデータ,外観)
図26はブーム,エレメント,ポリカーボネイト板等の加工済み品、図27は同軸ケーブル芯線をラジエーター(Rav,長)に入れる,図28,図29はより線をラジエーター(Rah,短)のパイプ穴に入れて芯線にかぶせる,図30は半田付けし,ポリカーボネイト板を仮止めする,図31は編組側を上にして,編組を2つに分けてラジエーター(Rav,Rah)のパイプ穴に入れて半田付けする,図32はポリカーボネイト板を取り付けてネジ止めする。これで右旋円偏波となります。図32の状態でラジエータークロス部にアクリルラッカースプレー(クリヤー)を3回吹き付けします。
なお,加工にはいろいろノウハウ(特にノギスの扱い)がありますが書ききれません。ノギスは200mm(BY製),600mm(mitutoyo中古品)を使いました。
⇑図26 ⇑図27 ⇑図28 ⇑図29 ⇑図30 ⇑図31 ⇑図31
⇑図32 ∶ この状態で半田付け部分にアクリルラッカースプレー(クリヤー)を3回吹き付けると同軸ケーブルに浸透し多少濡れても大丈夫
です。組立完了後にポリカーボネイト板の接合部分、ネジ部分、その他エレメントとブームの接合部分のすべてにKE45Tまたは
ボンド(ウルトラ多用途,クリヤー)を塗布しブーム内に雨が浸透しないようにします。ブームの先端は自己融着テープで雨が
浸透しないようにします。
⇑図33 ∶ 2本目に製作したアンテナのSWR特性。ラジエーターを前後左右に少し曲げると特性が少し変化します。 図33-1⇑
図33-1のように全てのエレメントが同一面になるように曲げてそろえます。
7. 2本スタック シミュレーション(スタック間隔∶86cm)
⇑ 図01 ⇑ 図02 ⇑ 図03
7-1. 2本スタック測定(スタック間隔∶110cm)AR測定周波数は435.550MHz
図34は2分配器(←ここで作ったもの)直下のSWR。図35(AA-1400),図39(N1201SA)はシャック内SWR(同軸ケーブル約30m)。
図36は2スタックのスタック間隔110cmの円偏波特性です。ARは2.7dBとなりました。ゲインアップはシングルで2本の平均が(回転した平均値が20.6dBμと20.7dBμ)20.65dBだったので23.6dBとの差は2.95dBアップとなりました。(大地反射の影響も考えられる?,別途調査予定)
図37は2スタック測定中。(右側は少し木の枝の陰になっています。測定値は±0.5dBぐらいは変動します)
図38は完成状態です。分配器からアンテナへの同軸ケーブルの長さは同じにします。アンテナのクロス部分の方向は2本とも同じにします。
⇑図34 ⇑図35 ⇑図36 ⇑図37 ⇑図38 ⇑図39
7-2. 2本スタック測定(スタック間隔∶86cm)(SWR等は110cmと同じ)AR測定周波数は435.550MHz
図40は2スタックのスタック間隔86cmの円偏波特性です。ARは1.81dBとなりました。ゲインアップはシングルで2本の平均が(回転した平均値が20.6dBμと20.7dBμ)20.65dBだったので24.6dBとの差は3.95dBアップとなりました。(測定誤差有り)
図41はARの測定図。図03相当。(目盛1.5dB)
図42は方位方向を360°回転した時のレベルパターン測定図。図02相当。 図43は設置状態写真
⇑図40 ⇑図41 ⇑図42 ⇑図43
2スタックの状態(86cm)でしばらく使ってみます。今までの14エレメントより1~2dB程度低下しているはず。
8. 436.5MHz 7エレメントクロス 2列×2段へ
さらに2本を作りました。
図45、図46はそれぞれのアンテナ単体のSWR特性です。製作の再現性は良いようです。
⇑図44 ⇑図45 ⇑図46
図47は2列2段(4本)の設置計画図です。図48は設置完了写真です。(図48をよくよく見ると縦ブームが左右が逆になっています。後日修正予定)
2列2段の中央にある4分配器はここに記載のものです。
⇑図47 ⇑図48
図49は4分配器のところで測定したSWR値。 図50は同軸ケーブルを約30m経由したシャック内SWR値。
図51はARと相対ゲインです。あまり良くないのでアンテナ4本の前後位置の微調整が必要か?,測定距離が近すぎるかも?
(図48の縦ブーム取付金具が裏表になっていて,前後が50mmズレている。図51は前後50mmズレている状態のデーター、失敗例!)
⇑図49 ⇑図50 ⇑図51
下図52,53,54は上記の50mmを修正して同一面にした状態の測定値。(SWRは変化なし)
図52は相対ゲイン及びAR1.2dB (435.550MHzと436.550MHzは測定の回転方向を逆にしました。435.550MHzと436.550MHzの差は無い)
相対ゲイン差∶27.5(2列2段,平均値)-24.6(2列,平均値)=2.9dBアップしました。ほぼシミュレーションに近い値となりました。
図53は方位方向を360°回転した時のレベルパターン測定図。図54は完成状態の写真(図48と縦ブーム取付金具右側が裏表逆)
⇑図52 ⇑図53 145MHz6eleX 1200MHz9eleX ⇑図54 435MHz7eleX2列2段
製作しながら書いていますので文章,図等は随時変更します。 (*1)∶円偏波アンテナの基礎 福迫 武 著 2018/10/3 (コロナ社)
2020/3/28
従来から使っていた435MHz7エレメント摂動励振クロスアンテナ2列2段の利得を測定しました。
利得は19.04dBi
(シミュレーション値:自由空間18.12dBi、地上高3mH太地反射含む:22.64dBi)**
JA1CPA