d40.1    436.5MHz 16エレメント摂動励振クロス円偏波アンテナ(circularly polarized antenna)CPAの製作 2024/04/14 

               436.5MHz16eleXCPA                                  工事中

 

この円偏波アンテナは、50Ωの同軸ケーブルを直接つなげることができるアンテナでマッチングケーブルや位相ケーブルは不要です。

ラジエーターの水平と垂直エレメントをクロスさせ、それぞれの長さを設定します。

ラジェーターの水平エレメントを共振周波数より短くして容量性に、垂直エレメントを共振周波数より長くして誘導性にします。

これにより90°の位相を作り出して円偏波を実現し、目標の周波数で共振させます。

さらに、水平と垂直エレメントの長さの差によってインピーダンスが高くなることが分かりました。

この性質を利用してクロスする部分のインピーダンスを高めて水平と垂直の2つのラジエーターを並列接続して50Ωにして同軸ケーブルを直接つなげるようにしたアンテナです。

この設計には、MMANAを使用してアンテナシミュレーションを行いました。

シミュレーションの要件は、 ①必要周波数でインピーダンスを約50Ω(SWR<1.2)にする。②必要周波数で共振(SWR<1.2)させる。③必要周波数で円偏波の軸比を1.5dB以下にする。④必要周波数でゲイン(16.5dBi以上)、F/B(20dB以上)も最適にする。

シミュレーションは、①~④を実現するように、もっぱら水平と垂直のラジェーターの「長さを変更して計算する」を繰り返し繰り返し行うもので一つの円偏波アンテナを設計するのに何百回と繰り返しました。(MMANAは単純な八木アンテナは自動計算機能がある)

 

1. シミュレーション(MMANA)      (図をクリックすると拡大します)

                          ↑図1 アンテナの外観                     ↑図2 エレメントのテキストデーター 

 

 ↑図3 436.5MHzの計算結果                  ↑図4 SWR特性      ↑図5 インピーダンス特性            ↑図6 ゲイン特性      

No1が自由空間、No2が地上高10m

 

  ↑図7 自由空間水平面指向性特性    ↑図8 436.5MHz軸比(AR)特性       ↑図9 435.0MHz軸比(AR)特性     ↑図10 438.0MHz軸比(AR)特性

Ga:16.79dBi,F/B比:20.73dB,SWR:1.07            軸比(AR):1.0dB                                軸比(AR):0.8dB                                軸比(AR):3.0dB

 

金属スタックブームを使った場合のシミュレーション↓

     ↑図11         ↑図12        ↑図13                    ↑図14                                  ↑図15

アンテナを取り付けるスタックブームは通常の八木アンテナであればアンテナエレメントに90°にして影響を無くすことができますが、このアンテナは90°にクロスしたエレメントになっているのでアンテナエレメントに対して45°なります。

そこでクロスアンテナの場合のスタックブームはプラスチック(当局はφ38×3mを使っています)にすることが推奨されています。経験上ではアンテナブームから1/2λをプラスチックにすれば影響がないことを確認しています。(435MHz:約350mm)

図11:アンテナ正面から見たスタックブームの状態

図12:アンテナ側面から見たスタックブームの状態(ラジェーター(Ra)からスタックブームまでの距離1.25mと1.0mの場合をシミュレーションしています)

図13:No1.が1.0m、No2.が1.25mの値です。あまり変化はありませんがスタックブームなしに比べてSWRが0.1悪くなっています。

図14:ラジェーター(Ra)からスタックブームまでの距離1.25mの軸比(AR)は1.8と悪くなっています。

図15:ラジェーター(Ra)からスタックブームまでの距離1.0mの軸比(AR)は3.5とかなり悪くなっています。

このアンテナの場合は1.25m(D6とD7の間)が限界のようです。ブームがラジェーターに近ずくほど影響を受けるようです。 

このアンテナの重量バランス上では1.0mが最適です。(同軸ケーブルが有るので!)

スタックブームをプラスチックにする場合の販売先を示しておきます。  

           ↑ここをクリック

 

2. 加 工 図

① アンテナ全体図 (各寸法の単位:mm)                                            ↑図17

図2のエレメントのテキストデーターの数値に近いほどシミュレーション値の性能に近づきます。

ブームのすぐの赤数字はラジェーター(Ra)の垂直エレメントから垂直リフレクター(Ref)及び各垂直ディレクター(D1~D14)までの距離です。( )内の赤数字は各垂直ディレクター(D1~D14)間の距離です。

アンテナブームのすぐの赤数字はラジェーター(Ra)の水平エレメントから水平リフレクター(Ref)及び各水平ディレクター(D1~D14)までの距離です。リフレクター(Ref)、水平エレメント(D1~D14)及び垂直エレメント(D1~D14)の差は全て10mmです。

ラジェーター(Ra)の垂直エレメントと水平エレメントは同一面です。

リフレクター(Ref)及び各ディレクター(D1~D14)の水平エレメントと垂直エレメントは同じ長さです。

ブームは□15mmアルミ角パイプで、先端に近いところは軽くするために細くして□12mmアルミ角パイプにしています。

ブームは全長を□15mmアルミ角パイプで行ってもOKです。(長さ4m物は運送の制限があるようです)

□アルミ角パイプ及びφ4mmアルミパイプの材質A6063またはA5052です。A1070(純アルミ)は柔らかくてダメです。 

 

② ラジェーター(Ra)、ディレクター(D1~D14)等の加工図、寸法表

             ↑図18                                            ↑図19                                     ↑図20                                   ↑図21              

図18:ラジェーターエレメントと同軸ケーブルの接続図(同軸ケーブルの心線、編組はエレメントパイプの中に入れて半田付けする)

図19:ラジェーター(Ra)部分断面図(フロントからパックを見た図、右旋円偏波)    

図20:ラジェーター(Ra)加工図(φ4mm銅パイプ) 

図21:リフレクター(Ref)、ディレクター(D1~D14)寸法と数量(長さの誤差:±0.1、φ4mmアルミパイプ、材質A6063)

同軸ケーブル(2D-LFB-S(φ3.9mm)にはシュベルトップバランを入れています)

 

③ ブーム及びポリカーボネイト板加工図

                                                                                            ↑図21

図21:ブーム及びポリカーボネイト板加工図(100mm以内の寸法公差±0.2、その他は±0.2~0.6)

ラジェーター(Ra)から各エレメントまでの寸法公差については、Ref,D1,D2,D3は±0.2、D4~D8は±0.4、D9~D14は±0.6程度とする。

 

3. 主な材料 ポリカーボネイト板以外は「モノタロウ」で購入できます。

 1. ブーム: □15角アルミパイプ×2m×1本、材質A6063、 エレメント間隔は累積誤差が出ないようにする。

   2. □12角アルミパイプ×2m×1本、材質A6063(□12角アルミパイプ×35mm×2コ、ラジェーター部分含む)

   3. エレメント: φ4mmアルミパイプ×1m×10本、材質A6063

   4. ラジェーター: φ4銅パイプ×1m×1本 または φ4銅パイプ×395mm×2本

   5. 中空スペーサー C-420-6, ×30個(廣杉計器)

   6. 透明ポリカーボネイト板5t×25×110, ×4枚(はざいや)←クリック (穴加工を自分でやると安い)

   7. 同軸ケーブル 5D-FB×5m 片側N-Pコネクター付き×1本。別途 RG58でシュベルトップを実施予定。

   8. なべネジM3×10, ×16個(ステンレス)、M3ワッシャー×16個(ステンレス)、M3スプリングワッシャー×16個(ステンレス)

   9. タッピングネジM3×10, ×8個(ステンレス)

   10. 接着剤:SUPER X 透明(セメダイン)、ブチルゴムテープ No.15(Nitto)

 

4. 主な工具類 ↓

パイプカッターミニ(PS-100)、オートポンチM(品番77317)、メジャー(5m)等は有ると便利。

接着剤はSUPER X (透明,セメダイン)、ドリル類(φ2.6, φ3.5, φ4.1, φ6.0, M3タップ)、ヤスリ、ケガキ針、

ノギス(大)は600mm、ノギス(中)は200mm、他に小型ボール盤、充電式ドライバードリル 等々

←(クリック拡大)

 

 

 

5. 加 工・組 立・測 定 ↓

6. 総組立 ↓

 

7. 設 置  

 

8. AR測 定 ↓↓        ↓左側が14ele                    ↓右側が16ele                                                ↓測定の模様(T-R間約10m)

         ↑↑14eleはシュベルトップバランを入れていません。16eleはシュベルトップバランを入れています。どちらも差は無いようです。↑↑

 

9.今まで使っていた14eleXCPAとの受信信号比較 ↓↓ 

LO-19の無変調キャリアを受信し14エレメントと今回製作した16エレメントを比較してみました。

どちらもMELは80°ぐらいでした。

アンテナ仕様(シミュレーション値)

14エレメント:Ga:16.15dBi(約8年間使用した)

16エレメント:Ga:16.79dBi(14エレメント比:+0.64dB)

左記の全時間(AOS-LOS)の平均値の差は16エレメントが+0.75dBμだったのでほぼシミュレーション値と合致している模様です。

なお、この衛星は円偏波で発射している模様でAOS-MELは受信アンテナ偏波と一致していない模様ですが、MEL後は偏波面が反転して一致した状態になって安定した受信状態になっている模様です。

(14エレメント、16エレメントアンテナは共に右旋円偏波)

LO-19 202404051553E83.2NU14eleXCPA_R 

LO-19 202404111556E78.7NU16eleXCPA_R_st 

 

9. オスカーハンターとの比較(435HS20,昔の定番,1985年ごろに発売終了)↓

修理して使っている人も多い(ここをクリック)

動作利得(Gain)についてはdB表記にしています。(0dB=2.14dBi)

 

←(クリック拡大)  

  

 

10.  このアンテナについてのいろいろ!

①MMANAについて!

MMANAはJE3HHT 森OMが作成したフリーソフトで20年近く前から使っています。ただし100%理解して使っているわけではありません。

このMMANAは米国政府研究機関で開発された「MININEC Ver3」を元にしているとのことで、HF帯を主体用に作られたようです。

当局は衛星通信用として主に145/435MHzのアンテナのシミュレーターとして使っています。

なおこのMMANAはシミュレーションする周波数に対してエレメント直径が太いと共振点が低い周波数にずれるようで、ハム用アンテナの本を多数書いておられるJG1UNE小暮OMがその書籍に書かれています。

「パソコンによるアンテナ設計」小暮裕明編著他、によると、『エレメント径が0.0001~0.01λで周波数オフセットは0.25~2%以上となっていて、0.01λを超えると良い結果が得られない』と記されています。

そのために試験的に1200MHz 6エレメント八木をφ3エレメント(0.0128λ)で1295MHzでシミュレーションして作って見ました。

その結果は、1280MHzで最良となりました。(実測値SWR=1.15、R=53.3Ω、jX=+5.6Ω) 周波数オフセットは、予定より少ない15MHz低い(1.16%)となりました。以上のようなことで435MHzでは主にφ4mm(0.0058λ)を使っています。

②このMMANAによる軸比(AR)のシミュレーションについては、アンテナを垂直にしてシミュレーションしてビーム先端の90°にした図の赤線(水平偏波)と黒線(垂直偏波)が同心円でその差を軸比(AR)としています。

③この摂動励振(セツドウレイシン)のアンテナについては、「円偏波アンテナの基礎」福迫 武 著の本に詳細が書かれています。

平行/不平衡変換について!このアンテナのラジェーターは平行型です。それに不平衡な同軸ケーブルを直接接続したいます。

これだと円偏波の軸比が悪くなることが予想されます。別途シュテルトップを付けた場合と比較検討します。

⑤円偏波の右回転(右旋円偏波)と左回転(左旋円偏波)及び回転数について!

円偏波には右回転(右旋円偏波)と左回転(左旋円偏波)が有ります。ここでは右回転(右旋円偏波)で作っています。お互いに通信する場合は同じ回転方向のアンテナを使います。お互いに回転方向が違うと損失が非常に大きくなります。

円偏波の回転は1Hzに1回転します。従って435MHzでは1秒間に4億3千500万回転していることになります。(衛星のスピンとは関係ない!)

最近のキューブサットのアンテナはダイポールまたはモノポールが使用されています。

衛星はゆっくりとスピン(回転)しているので、ダイポールまたはモノポールアンテナから出た電波は直線偏波でスピンと共にゆっくりと回転し偏波面が水平偏波、斜め偏波、垂直偏波と変化してゆきます。

この偏波面が変化する電波を円偏波アンテナで受けると電波の偏波面に関係なく安定した受信ができます。(送信も同じ)

なお偏波面が変化する電波を直線偏波アンテナ(八木アンテナ等)で受信すると電波の偏波面に関係して大きく変動します。(送信も同じ)

⑥円偏波アンテナで直線偏波を受信するとロスが発生する。(直線偏波を円偏波アンテナで受信するのも同じ)

変換ロスが3dB発生します。(直線偏波→直線偏波に比べて直線偏波→円偏波は3dB弱くなります。変動は少なくなるが3dB弱くなる)

⑦衛星通信で円偏波アンテナを使うメリットは有るのか!(私見)

アマチュア無線衛星は、モノポールアンテナまたはダイポールアンテナの直線偏波アンテナを使用しています。

これらの直線偏波アンテナは、衛星のスピンによってゆっくりと回転しています。そのため、直線偏波アンテナから出た電波は垂直偏波から斜め偏波、水平偏波へと移行し、偏波面が変わっていきます。

垂直偏波のアンテナで受信すると、衛星からの電波の偏波が水平偏波になった時は受信できなくなります。

アマチュア無線の衛星通信は短時間のQSO(通信)が多いため、衛星と偏波が一致したピークで通信することが重要です。

一方、地上局が円偏波アンテナを使用している場合、偏波面が超高速で回転しているため、偏波面に関係なく垂直偏、斜め偏波波及び水平偏波も受信できます。ただし、偏波の変換ロスが3dB発生します。

円偏波アンテナは直線偏波アンテナのピークより3dB劣りますが安定した送受信ができます。

衛星の地球局としてコマンドを送ったりビーコンを安定して受信する場合には、円偏波アンテナが適しています。ただし、QSOに使うアンテナより3dB以上のゲインがあるアンテナが望ましいと思います。

衛星のスピンによって衛星のアンテナの先端が地球に向くような時は円偏波アンテナでも安定して送受信できるわけではありません。

⑧地球局でもない当局が,なぜ円偏波アンテナを作って使っているのか?

それは簡単です。私のコールサインがJA1CPACircularly Polarized Antenna、円偏波アンテナ)だからです!hihi

                                                              73