33. 衛星通信用アンテナのいろいろ(2021/07/17 KANHAM21  JAMSAT  Web講演資料)                      2021/07/23

                                                                                                                                     

 地上局の円偏波アンテナに対する当局の結論。                       2024/08追加

(地上局のアンテナは円偏波アンテナが良いのか直線偏波アンテナが良いのか)

当局の結論:QSO(または受信)のみであれば直線偏波アンテナでも良くアンテナゲインも中程度で良い。

 

昔から衛星通信には円偏波アンテナが良いと云われていました。

それは、

①衛星が円偏波で送受信していたから地上局も円偏波アンテナが良い。

 (ただし左旋円偏波,右旋円偏波の偏波面を一致させる必要がある)

②チョイ昔(20年以上前)は、衛星の高度が高く(1000~1500km)て衛星からの電波が弱かった。

③衛星や地上局の受信機の感度が悪く信号のS/N比が悪かった。(感度を上げてもノイズばかり)

 

現在は(2005年ぐらいから~)、

①衛星に搭載されるアンテナが直線偏波アンテナ(モノポールやダイポール)になった。

②キューブサットが主流で高度も500~600kmと低くなり信号が強くなった。

③衛星や地上局の受信機の感度が劇的に良くなり信号のS/N比良くなった。(信号がはっきりと)

 

当局が衛星通信を始めたころ(1976年~ ) は、AO-7(UP145MHz/DW29MHz) の信号は、

FT-101+プリアンプ+HB9CVでノイズばかりの受信でS/N比は+10~-5dBの感じでCW/SSBは

フィルターで受信して何とかQSOしていました。

2008年に衛星通信を再開して同じAO-7の信号をFTdx9000+クロスダイポール(29MHz)でS1~3、

CW/SSBで楽々とQSOできました。この差は受信機の大きな進歩でしょう。

 

現在は(2010年ぐらいから~)

1.QSOのみであれば直線偏波アンテナでも良くアンテナゲインも中程度で良い。

    理由:QSBの信号のピークが10~30秒はあるのでそのピークに合わせてQSOすれば良い。

    ただし145/435MHzが同時にピークになるか不明な部分がある。※1

2.衛星の地球局などでデーター受信やコマンド送信するのであれば円偏波が望ましく,

 ゲインも出来るだけ多い方が良い。

   理由:円偏波アンテナの方が変動が少ない場合が多いが,変動が有る場合もあるのでゲイン

 は多い方が受信・送信の確率が向上する。

3.もう一つの結論として、145/435MHz帯の様々な衛星の信号を受信したが、受信信号強度(dBμ)の変動は,

 垂直偏波アンテナと円偏波アンテナが同等か,又は円偏波アンテナの方が変動が少ない場合が多い。

 ただし、ピークのアンテナゲインは円偏波アンテナより垂直偏波アンテナが3dB良い。(衛星が直線偏波の場合)

 

                    ↓以下、講演資料↓ 

 

      順次説明を加えます。

  

https://ja1cpa.jimdo.com/

 

リクエストに応えて!

 主に衛星のビーコンを受信することを目的に,小学生が安全に作れる受信用アンテナです。アルミホイルとボール紙で作ります。

また,これを発展させてアマチュア無線用に送信も出来る構造にしました。非常に軽いのが特徴です。

d19.  437MHz 3エレメント・アルミホイル+ボール紙=八木アンテナの開発経過(受信専用)   

d20.  アルカミアンテナ (アルミホイルとボール紙で作る八木アンテナ) の製作(受信専用) 

  

d23.  アルカミアンテナ2 (送受信できる)   433MHz 4エレメント八木 (CQ誌6月号相当品) 

d24.  アルカミアンテナ2 436.5MHz 4エレメント FD型  11.03dBi   

d26.  アルプラアンテナ2 437MHz 4エレメント FD型 (ボール紙をプラスチック板にした)

d27   A4画用紙で作るアルカミアンテナ2 435MHz 4エレメントFD型 50g  

衛星通信(QSO)をしている人達はどの様なアンテナを使っているのでしょうか?

QSLカードに記載されているアンテナを2009年(100枚)と2021年(35枚)で調べた。

145MHz帯と435MHz帯を別々に集計した。多い順に、

145MHz2009年1位5エレメント,2位10エレメント,3位3エレメント,

145MHz2021年1位3エレメント,2位5レメント,      3位10エレメント,

435MHz2009年1位15エレメント,2位10エレメント,3位5エレメント,

435MHz2021年1位15エレメント,2位5レメント,     3位20エレメント,

主な衛星

2009年FO-29,AO-27,SO-50,AO-51,VO-52

2021年FO-29,AO-27,SO-50,AO-91,AO-92,RS-44

主に使われていた145/435MHzの組み合わせ

2009年1位5/10, 2位10/15, 3位3/5(エレメント)    (145/435)

2021年1位3/5,   2位5/10,     3位10/15(エレメント)   (145/435)

考察                                   組み合わせの結果を見ると2009年は145MHz5エレメント/435MHz10

                                   エレメントが1位だったが2021年は3/5が1位となっている。

                                   これは使用できる衛星が2009年は比較的高度が高いAO-51,VO-52

                                   だったのに比べて2021年は比較的低いAO-91,AO-92になったので   

                                   アンテナのエレメントも少なくなっていると思われる。

                                   なお、全体的に円偏波アンテナは非常に少なくい。  

 

 3. 円偏波アンテナは どの程度良いのか?(直線偏波アンテナ比)

 

説明終了後に質問:「どの様なシステムで受信したのか?」があったので左図を追加した。

また後日に,「アンテナが密集しているので互いに干渉していないか?」の指摘もあったが同じ周波数のアンテナは約1λは離れているので影響は少ないのではないか!(詳細は未検討)

 

 

 測定システム(受信信号レベルはほぼ一致させた) 

アンテナは左から

145MHz6エレメント円偏波アンテナ、

435MHz15エレメント垂直偏波アンテナ、

435MHz14エレメント円偏波アンテナ、

145MHz10エレメント垂直偏波アンテナ

これをAOS~LOSまでを同一周波数の信号を2台のIC-R8600に入れてDC0~5V信号で出てきたのを2チャンネル電圧データーレコーダー(0.1 or 0.5sec)で記録しdBμに換算した。(今はSDRでも出来る?!)

 

AO-73 MEl87°の受信信号強度(dBμ)グラフ

(これは代表例であって他のオービット、他の衛星は様々な変化をしている)

 

左端がAOS、右端がLOS、緑線が145MHz6エレメント円偏波アンテナ、赤点線が10エレメント垂直偏波アンテナ

AOSからMEl付近まで円偏波アンテナ、垂直偏波アンテナ共に大きく変動している。一定周期でスピンしているのが分かる。

MEl付近からLOSまでは円偏波アンテナは変動は少なく、直線偏波アンテナは変わらず大きく変動している。

 

 

AO-85は動作している期間が短くて信号も弱かった。現在は停波中。

データーは少ないが,垂直偏波アンテナと円偏波アンテナが同等で変動も非常に少ない。

天頂付近の落ち込みも無い。

これは垂直偏波アンテナの場合は天頂付近で約180°回転し偏波面が変わる要素が大きい。

このような衛星は他にもあり,どの様な衛星コントロールをしているか知りたいところである。

地上局の円偏波アンテナに対する当局の結論。

1. QSOのみであれば直線偏波アンテナでも良くアンテナゲインも中

 程度で良い。

    理由:信号のピークが10~30秒はあるのでそのピークに合わせて

 QSOすれば良い。ただし145/435MHzが同時にピークになるか不明

 な部分がある。※1

2. データー受信やコマンド送信であれば円偏波が望ましく,ゲインも

 出来るだけ多い方が良い。

 理由:円偏波アンテナの方が変動が少ない場合が多いが,変動が有る 

 場合もあるのでゲインが有れば受信の確率が向上する。

3. AO-85のように垂直偏波アンテナと円偏波アンテナが同等で変動

 がほとんど無い衛星が他にもあり,どの様に衛星をコントロールして

 いるか知りたいところである。  

4. もう一つの結論として、145/435MHz帯の様々な衛星の信号を受

 信したが、受信信号強度(dBμ)の変動は,垂直偏波アンテナと円偏波アンテナが同等か,

      又は円偏波アンテナの方が変動が少ない場合が多い。300以上の衛星を受信した結果から) 

                             ※1: ダウンリンクのピークは受信して分かるが,アップリンクのピークは不明。

                       (145MHzと435MHzで同時にビーコンを出せばその変化は分かる,しかし対策はできない!)

 

 

円偏波アンテナの提案

一般的に円偏波アンテナを作る方法は2本の直線偏波アンテナを90°クロスに配置し,1本を電波の進行方向に1/4λずらして位相差を作る方法。又は2本の直線偏波アンテナを90°クロスに配置し電波の進行方向にほぼ同じ位置に配置し,片側のアンテナの給電ケーブルを1/4λ長くして位相差を作る方法がある。

しかしこの方法は正確に円偏波にするのはかなり難しい。

そこで,クロスするラジエーターの水平と垂直エレメントの長さを変えて、水平エレメントを共振周波数より長くして誘導性にし、垂直エレメントを共振周波数より短くして容量性にして、90°近い位相を作って円偏波にし、誘導性と容量性をほぼ同じ値にして目的の周波数で共振させ、さらに水平と垂直エレメントの長さの差を付ける事によって結果的にインピーダンスが高くなる事が分かったので、この性質を利用してクロスする部分のインピーダンスを高くして、クロスする2つのラジエーターを並列接続で50Ωにして同軸ケーブルを直接 接続するようにしたアンテナ』にした。この方法は摂動励振と言う。                      

                                   d12.  436.5MHz 6エレ・エレメント摂動励振(位相式)クロスアンテナ

                                   の製作例